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円安で資産は守れるのか、それとも削られるのか? 若者が知るべき通貨リスクと不動産投資の視点

不確実性の高まる経済環境において、金利差やインフレ、デジタル赤字など複合的要因により円安が進行し、資産の実質価値が揺らいでいる。多くの個人は情報を得ていても、何に基づいて判断すべきかという軸を持てていない。重要なのは短期の為替変動ではなく、長期視点で資産をどう分散し設計するかである。不動産投資を含む複数資産を一貫した戦略で組み合わせることが、持続的な資産形成を支える鍵となる。

日本はもはや「安い国」の現実

日本はかつて「物価が高い国」として知られていました。しかし、近年は反対に「物価が安い国」として知られるようになっています。今では「日本に旅行に行こう」と外国人観光客がたくさん日本にやってくるようになりました。

日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2025年の訪日外国人数は推計で4268万3600人とのこと。過去最高を記録しました。

<訪日外国人数(2000年〜2025年)>

出典」日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」より(株)Money&You作成

2000年時点での訪日外国人数は476万人ですから、この四半世紀で10倍近くに増えた計算です。2003年に「2010年までに訪日外国人1000万人」を目指した「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がスタート。国内の消費増のための成長戦略として、官民一体となってさまざまな観光促進運動が行われました。その甲斐もあり、訪日外国人数は2013年に1000万人を達成しました。その後は新型コロナの影響こそあるものの、爆発的な増加傾向にあるといってよいでしょう。

訪日外国人が訪れる地域も、東京・大阪・京都などのメジャーなスポットだけでなく、日本全国さまざまな地域に及んでいます。一部の地域では観光客の過度な集中やマナー違反などによるオーバーツーリズム(観光公害)が問題になっているほどです。

国は目下「2030年までに6000万人」という目標を掲げているため、今後もさらに訪日外国人数は増えることが見込まれます。訪日外国人による消費(インバウンド消費)は観光業だけでなく飲食・交通・宿泊・買い物などの産業に波及します。観光庁「インバウンド消費動向調査」(2025年速報)によると、2025年1年間の訪日外国人旅行消費額は約9.5兆円にものぼり、過去最高を記録しています。

訪日外国人数が増え続けている理由のひとつに、為替レートが円安になって、日本への旅行に割安感が出たことが挙げられます。

「円安・円高」とは、外国の通貨から見て、円の価値が高いか安いかを表す言葉です。たとえば、1ドル=100円のときには、1ドルで100円が手に入ります(ここでは手数料などは考慮しません)。これが1ドル=120円になったら、1ドルで120円が手に入るようになります。同じ1ドルで手に入る円が増えたのですから、「ドルから見て円の価値が安くなった(=円安)」となります。

反対に、1ドル=100円が1ドル=80円になった場合、同じ1ドルで80円しか手に入らなくなった(手に入る円が減った)のですから「ドルから見て円の価値が高くなった(=円高)」となります。

なお、為替レートはシーソーの関係にあります。上記の円とドルでいえば、円安とドル高、円高とドル安は同時に起こります。

ドルと円の為替レートを見ると一目瞭然で、この数年為替レートが円安方向に動いています。

<ドル・円の為替レート(2016年1月〜2026年3月6日)>

出典:(株)Money&You作成

この約10年間のドルと円の為替レートを見ると、おおよそ2021年ごろまでは、1ドル=100円〜120円の幅で推移しています。2016年には、わずかながら1ドル=100円を切った日もありました。しかし、2022年以降は一気に円安に進んでいます。

円安が進むと、訪日外国人観光客にとって日本旅行が割安になります。

日本でレストランに行き、1万円のコースメニューを楽しんだとします。1ドル=100円のときであれば、100ドル必要です(手数料などは一切考慮しません)。しかし、1ドル=150円のときであれば、約67ドルでコースメニューが楽しめることになります。そのときどきの為替レートの変化によってレストランのコースメニューの内容が変わることは基本的にはないはずです。つまり、為替レートの変化だけで価格が約3分の2になるのですから、これは割安ですよね。

レストランのコースメニューだけではありません。同じ理屈で、もっと高級なホテルへの宿泊も観光地での高価なお土産の買い物も割安にできます。訪日外国人の間で「日本は安いのにサービスもよい」と評判になり、さらなる訪日外国人観光客を呼ぶことになります。

日本の価値が低くなったわけではない

しかし、「円安=日本の価値が低くなった」ことを表すわけではありません。訪日外国人にとって、日本は依然として魅力的な「行きたい国」となっているからです。

電通が東日本大震災のあった2011年から20か国・地域を対象に毎年実施している「ジャパンブランド調査」(2025年)によると、日本は「再び観光に訪れたい国」の第1位になっています。

<観光目的の再訪意向率(複数回答)>

出典:電通「ジャパンブランド調査」(2025年)より

日本の再訪意向率は52.7%で、2位の韓国(20.0%)、3位の米国(16.6%)を大きく引き離しています。

同調査では、再び日本を観光したいと考える理由が「円安」だけではないことも示されています。

<訪日希望のきっかけ(複数回答・抜粋)>

出典:電通「ジャパンブランド調査」(2025年)より(株)Money&You作成

訪日希望のきっかけとして「円安の影響」をあげる国・地域はそれほど多くありません。香港と台湾は約4割と比較的多くなっていますが、その他は1割〜2割、イギリス・ドイツ・フランスにいたっては6〜7%しかありません。それよりも「日本食への関心」「日本製品への好感」といったところが日本への旅行を後押ししています。「家族や友人のおすすめ」もまんべんなく2割〜3割の国・地域の人々が挙げています。

今後の訪日時に関心のある体験項目としては「和食」「自然景勝地」「四季の体験」などが上位に挙げられています。日本の誇る文化や自然などが訪日外国人にも受け入れられているようです。

<関心のある訪日体験(上位項目・全体平均・複数回答)>

出典:電通「ジャパンブランド調査」(2025年)より

このように、日本への観光目的だけでなく、日本の製品・サービスも高く評価されています。決して日本の価値が低くなってはいないことがわかるでしょう。

日本で暮らす人にとっては、物価高が続く

訪日外国人からすれば「物価が安い国」の日本ではありますが、日本に住む私たちからすれば「物価が高い国」です。世界的に食料価格や資源価格などが上昇するなか、食料や資源の多くを輸入に頼る日本でも、物価高が進んでいます。

商品やサービスの価格動向を調べる「消費者物価指数」も、価格変動の大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の指数が2022年4月以降、前年同月比で2%以上の上昇が続いています。

資源の価格高騰と聞いて、もっともイメージしやすいのは原油価格ではないでしょうか。

<WTI原油先物価格の推移(2016年1月〜2026年3月6日)>

出典:(株)Money&You作成

原油価格の代表的な指標とされているWTI原油先物価格は、2019年まで多少の上下はありますが、1バレル=60ドル前後で取引されてきました。しかし、2020年の新型コロナの感染拡大の影響を受けて大きく下落。2020年4月には10ドル台にまで下がりました。

その後、徐々に新型コロナからの回復が進んで経済活動が再開されてきたことに加え、2022年に発生したロシアのウクライナ侵攻の影響により、WTI原油先物価格は1バレル=120ドル近くまで一気に上昇しました。2025年以降、再び1バレル=60ドル程度で落ち着いてきたのですが、2026年2月に米国がイランを攻撃したことをうけて中東情勢が一気に緊迫化。イランが原油輸出の要衝であるホルムズ海峡の封鎖に乗り出しているという報道もあり、原油価格は再び急騰しています。

日本は食料自給率も低い国です。日本のカロリーベースの食料自給率は約38%(2024年度)で、先進国のなかでも最低水準です。小麦、大豆、トウモロコシなど、多くの食品の基本となる穀物を輸入に依存しています。円安が進むと、原油のような資源だけでなく、食料品の輸入コストも上がるので、物価の上昇に繋がります。

今後も円安は続く傾向

今後も円安は続く傾向が高いでしょう。

本来ならば、日本円の金利が上昇すると、日本円を持っていることで得られる金利が上がるため、日本円を欲しいと考える人が増え、日本円の価値が上がるという流れなのですが、現状は円安傾向が続いています。

国内外の金利差が為替レートに与える影響は大きいのですが、この数年の円安はそれ以外の要因が大きくなってきているからです。

日本ではモノやサービスの輸入額が輸出額を上回る「貿易赤字」が続いています。財務省「令和7年分貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を差し引いた金額は−2兆6507億円で、5年連続の赤字となっています。

貿易赤字ということは、日本円を他の国の通貨に両替(=売る)して支払う額のほうが多いということですから、円安を後押しする要因になります。

日本人や日本企業が海外企業のデジタルサービスを多く利用することで生じる「デジタル赤字」も軽視できません。

私たちの生活には、さまざまなデジタルサービスが欠かせなくなっています。YouTubeやApple Musicといった動画・音楽の配信サービスを使わない人は今や少数派でしょうし、リモートで会議をするときにはZoomなどを利用します。パソコンに入っているOfficeやAdobeのソフトを使っている人もたくさんいます。ただ、これらのほとんどは米国など海外の大手企業が開発したものです。これらのサービスを利用するために日本円で決済すると、海外の企業は日本円を取るなどの外貨に両替するため、円安になるという流れです。

デジタル赤字は年々増加。2025年時点でその額は−6.7兆円にも及んでいます。

<デジタル赤字の推移(2014年〜2025年)>

出典:日本銀行時系列統計データ検索サイトより(株)Money&You作成

また、地政学リスクも円安要因になります。

地政学リスクには、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの紛争、米国のベネズエラ・イラン攻撃など、政治的な対立、宗教問題、外交問題、戦争などがあります。

先のイラン攻撃によって原油価格が上昇し、日本の原油輸入金額が増加すると、円を売ってドルを買う動きが大きくなるので円安の要因になります。

昔は「有事の円買い」といって、地政学リスクが生じたときに円が買われる傾向がありましたが、今は「有事のドル買い」が優勢ですから、これも円安の要因になります。

円安が進む局面では、資産を円で持っていると目減りすることになってしまいます。毎月の給与は日本円で受け取っているのに、物価はグローバル価格となってしまえば、たとえ給与がこれまでと同じ金額だったとしても、買えるものが減っていくことになってしまいます。

長期的に円安傾向が続くという側面で考えれば、資産の一部を外国の株や債券といった外貨建ての資産や、海外に投資している投資信託などを保有していることで、その恩恵を受けられるでしょう。

ただ、今後円高の局面が絶対にやってこない、とは言い切れません。

また、世界的に見て、日本がつくる製品・サービスの価値は高いのですから、日本企業の業績拡大→日本株上昇の可能性は高くあります。

よって、外貨建て資産だけでなく、日本株や国内資産に投資する投資信託などにも分散して保有しておくのがベターでしょう。

何より大切なのは円安でも円高でも、関係なく投資を続けることです。投資は長期・積立・分散の王道にのっとって、早く始めて長く続けることで堅実に増やすことができます。NISAやiDeCoといった節税に役立つ制度を活用し、低コストの商品にコツコツ投資を続けていきましょう。

投資判断の3視点で考える

資産形成は「知識」ではなく「判断軸」で決まります。次の3つの視点から、自分に合った選択を考えてみてください。

  1. 分散という考え方を持つ→ 資産の分散について考えよう
  2. 守りながら増やす仕組み→ 不動産投資が生命保険がわりに!
  3. 節税しながら資産形成する→ iDeCo(イデコ)と不動産投資で節税しながら将来に備えよう
  4. 本当にそれだけでいいのか?→ NISAだけで大丈夫?

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

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