2026年公示地価から見る最新地価動向
2026年は早くも桜の季節となりました。読者の皆様もお花見に行かれた方も多いのではないでしょうか。一方世界を見渡すと中東情勢が緊迫化しつつあり私達の生活にも徐々に影響が及びつつあります。今後の経済動向は極めて重要ですが、それと共に住宅購入や資産運用において地価動向も大切となってきます。今回のコラムでは経済動向を踏まえながら最新の地価動向について述べてみたいと思います。
三大都市圏の地価動向
地価は需要や経済の影響を受けながら変動します。景気上昇期には地価も上昇しやすく、逆にデフレの時などは地価が調整局面となるケースが多くなっています。
日本ではこれまでインフレや経済成長などを経て物価と同様に地価も上昇してきました。高度経済成長期やバブル期などには地価、不動産価格が大きく上昇しましたが、アベノミクス以降、現在もまた地価上昇期が続いています。
国土交通省の発表した2026年の公示地価によると、全国の地価は全用途平均で2.8%の上昇と5年連続の上昇となりました。三大都市圏では住宅地、商業地、工業地ともに地価が上昇となり、東京圏と大阪圏では地価上昇率が拡大しました。中でも東京圏の商業地は平均で9.3%と高い上昇率となりました。
この背景には多くの業種による土地需要の増大があります。また工業地においても物流を始め自動車、半導体、電気関係など多くの土地需要が押し上げたと言えます。
<公示地価>圏域別・用途別対前年平均変動率
| 住宅地 | 商業地 | 工業地 | ||||
| 2025年 | 2026年 | 2025年 | 2026年 | 2025年 | 2026年 | |
| 東京圏 | 4.2% | 4.5% | 8.2% | 9.3% | 7.1% | 6.8% |
| 大阪圏 | 2.1% | 2.5% | 6.7% | 7.3% | 7.3% | 8.1% |
| 名古屋圏 | 2.3% | 1.9% | 3.8% | 3.3% | 3.9% | 3.7% |
東京都の地域別地価上昇率は
東京都の地価の動向を見てみると、東京都平均では住宅地で6.6%、商業地で12.2%の上昇となりました。都区部では住宅地が9.0%、商業地が13.8%と住宅地の上昇率も高くなっています。商業地は多摩地域を除く東京都区部地域が平均で10%以上の上昇となりました。区部都心部では住宅地で13.2%、商業地で14.8%と都心に近いほど住宅の地価上昇率が高くなっています。
東京都においては住宅地・商業地ともに地価上昇エリアが周辺に拡大してきています。この背景には広域に渡り再開発や鉄道ネットワークが拡充された事も要因の一つと考えられます。
<公示地価>東京圏の地域別対前年平均変動率
| 住宅地 | 商業地 | |||
| 2025年 | 2026年 | 2025年 | 2026年 | |
| 東京都 | 5.8% | 6.6% | 10.5% | 12.2% |
| 東京都区部 | 7.9% | 9.0% | 11.8% | 13.8% |
| 区部都心部 | 11.7% | 13.2% | 13.0% | 14.8% |
| 区部南西部 | 7.5% | 8.3% | 10.9% | 13.1% |
| 区部北東部 | 6.7% | 7.9% | 10.1% | 12.5% |
| 多摩地域 | 3.4% | 3.9% | 5.3% | 6.0% |
区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区
区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区
区部北東部:墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区
東京都の区別の地価上昇率は
東京都区部の地価上昇率を区別に見てみましょう。
住宅地では港区が地価上昇率16.6%でトップとなりました。港区はもともと大企業や外資系企業の集積するオフィス街と共に高級マンションや高級住宅街が広がる街でしたが、近年は六本木、麻布、虎ノ門、高輪ゲートウェイを始め大規模な再開発が進行し、就業人口の増加から住宅需要も増加、また都心型タワーマンション用地の土地需要などから地価も大きく上昇していると考えられます。最近完成した麻布台ヒルズではワンルームマンションが何と3億円もするなど高額化が進んでいます。
2位の台東区は「浅草」などの観光地のあるエリアです。商業地では1位となりました。インバウンドの増加により浅草に訪れる観光客も増加し、商業施設の需要から商業地の地価が上昇していると考えられます。日中関係の冷え込みから中国人の訪日客は減少していますが、欧米を中心とする多くのインバウンドが増えた事も地価上昇の要因となっています。住宅地では品川、中央、文京区などが続きます。商業地でも文京区、中野区、杉並区など都心周辺部の地価が上昇しています。特に筆者のオフィスのある中野区は駅周辺が官民共に大規模な開発が加速し、まさに準都心並みの地価水準となりつつあります。
<公示地価>2026年東京23区 地価上昇率ランキング<住宅地・商業地>
| 順位 | 住宅地 | 商業地 | ||
| 区 | 上昇率 | 区 | 上昇率 | |
| 1 | 港区 | 16.6% | 台東区 | 19.1% |
| 2 | 台東区 | 14.2% | 文京区 | 17.8% |
| 3 | 品川区 | 13.9% | 中野区 | 17.5% |
| 4 | 中央区 | 13.8% | 杉並区 | 17.5% |
| 5 | 文京区 | 13.8% | 品川区 | 16.3% |
| 都区部平均 | 9.0% | 都区部平均 | 13.8% | |
東京都の地価高価格ランキング
東京都の地価が最も高い地点はどこでしょうか。
住宅地の1位は赤坂一丁目の地点です。都心の真ん中、六本木アークヒルズの裏手となります。1住戸が2億円から3億円もするなどの高級マンションが立ち並ぶエリアです。
2位は白金台3丁目の地点です。都営三田線「白金台」駅近く、東京庭園美術館や国立科学博物館附属 自然教育園などのあるエリアです。旧宮家のお屋敷のあった由緒あるエリアです。
隣駅の「白金高輪」駅からは南北線の延伸も予定されており将来性の高いエリアです。3位は千代田区の六番町のエリアです。こうした「番町」と付く地名は、江戸時代に警護役の旗本が住んだエリアです。
旧江戸城(現在の皇居)の西側にあたる高級住宅街です。周辺には大企業の本社などもあります。千代田区は特にタワーマンションにおける短期転売について最も早く関心を示した事でも話題になりました。
【公示地価】2026年東京都区部 地価高価格地点ランキング<住宅地>
| 区 | 所在「住居表示」 | 価格/㎡ | |
| 1 | 港 | 赤坂一丁目1424番1「赤坂1-14-11」 | 711万円 |
| 2 | 港 | 白金台三丁目55番4外「白金台3-16-10」 | 548万円 |
| 3 | 千代田 | 六番町6番1外 | 530万円 |
| 4 | 港 | 南麻布四丁目12番1「南麻布4-9-34」 | 499万円 |
| 5 | 港 | 南麻布一丁目35番1外 「南麻布1-5-11」 | 476万円 |
商業地で最も地価が高い地点は、銀座の山野楽器本店の地点で20年連続の日本一となりました。2016年には1平方メートルあたり4,010万円でしたが、2026年には6,710万円と1.5倍以上に値上がりしています。1坪に換算すると2億2143万円となります。1坪は大体畳(たたみ)2畳分ですので、1畳あたり1億円を超える事になります。山野楽器の前を通る時は、1畳1億円の上を歩いていると考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
またベスト5の中では1位から4位までが銀座となりました。2位は銀座5丁目、数寄屋橋の交差点の近くです。3位は「銀座一丁目」駅の近くの地点で1階に「ダンヒル」があり、正面には「ティファニー」や「ブルガリ」などの高級ブランドショップの立ち並ぶエリアです。銀座のブランド力は国内だけではなくインバウンドにも知られており、地価も非常に高い水準となっています。5位は新宿3丁目の地点です。「新宿」駅東側の2025年に閉館した新宿アルタの隣で1階に「グッチ」の店舗があるビルです。新宿は西口でも大型の再開発が進行しており、今後は新宿駅周辺の地価がさらに上昇する可能性もあります。
【公示地価】2026年東京都区部 地価高価格地点ランキング<商業地>
| 区 | 所在「住居表示」 | 変動率 | |
| 1 | 中央 | 銀座四丁目2番4「銀座4-5-6」(山野楽器銀座本店) | 6,710万円 |
| 2 | 中央 | 銀座五丁目103番16「銀座5-4-3」(対鶴館ビル) | 5,700万円 |
| 3 | 中央 | 銀座二丁目2番19外「銀座2-6-7」(明治屋銀座ビル) | 4,960万円 |
| 4 | 中央 | 銀座七丁目1番2外「銀座7-9-19」(ZARA) | 4,760万円 |
| 5 | 新宿 | 新宿三丁目807番1外「新宿3-24-1」(新宿M-SQUARE) | 4,200万円 |
東京都区部の地価上昇率ランキング
東京都の地価上昇率のランキングを見てみましょう。
住宅地では港区港南3丁目の地点が22.2%の上昇で1位となりました。「高輪ゲートウェイ」駅が最寄り駅となる湾岸エリアでタワーマンションなどが多く建ち並ぶエリアです。JR東日本では「広域品川圏」のまちづくり計画を発表しており、「高輪ゲートウェイ」はその中核的な場所となります。駅にはAIやロボットなどの活躍する店や仕組みなどもある近未来都市を感じさせます。
2位は文京区本郷一丁目の地点です。JR「水道橋」駅と地下鉄「本郷三丁目」駅の中間あたりに位置し、マンションが多く建ち並び東京ドームも近いエリアです。
3位と4位は港区の赤坂となりました。3位の赤坂1丁目は「アークヒルズ」「サントリーホール」などの裏手で「スペイン大使館」や「オークラ 東京」などに囲まれた場所です。こんなところに住宅があるのもすごいと感じます。4位の赤坂6丁目の地点は六本木の「東京ミッドタウン」の裏手の方、米国大使館職員住宅の「シロタゴードンタワー」に面した地点です。5位の芝浦二丁目はJR「田町」駅やゆりかもめ「芝浦ふ頭」駅が最寄りの湾岸エリアの地点でタワーマンションも多いエリアです。
【2025年公示地価】東京都区部 地価上昇率ランキング<住宅地>
| 順位 | 区 | 所在「住居表示」 | 上昇率 |
| 1 | 港 | 港南三丁目6番7「港南3-7-23」 | 22.2% |
| 2 | 文京 | 本郷一丁目107番1「本郷1-28-3」 | 20.8% |
| 3 | 港 | 赤坂一丁目1424番1「赤坂1-14-11」 | 20.5% |
| 4 | 港 | 赤坂六丁目1911番「赤坂6-19-23」 | 20.4% |
| 5 | 港 | 芝浦二丁目1番33「芝浦2-3-27」 | 20.2% |
次に商業地の上昇率を見てみましょう。
1位は渋谷区の桜丘町の地点となりました。桜丘町では大規模な再開発が行われ「渋谷サクラステージ」が2024年に開業し街が大きく変わっています。今回1位となった地点はオフィスビル「渋谷インフォスタワー」に近い地点です。地価が30%近くも上昇するなど大きく上昇しています。周辺は小規模なマンションや店舗も多いエリアです。
2位から4位までは浅草・西浅草の地点となりました。2位の浅草1丁目の地点は「浅草」駅前の吾妻橋の交差点の地点です。3位の西浅草2丁目の地点はつくばエクスプレス「浅草」駅近くで「浅草ROX」なども近いエリアです。4位の浅草2丁目の地点は「浅草寺」や歴史のある遊園地「花やしき」などの裏手となります。このエリアは「裏浅草」などと呼ばれ人気が出てきています。
5位の渋谷2丁目の地点は「渋谷」駅西側で青山学院大学の手前あたりのエリアです。渋谷駅周辺の再開発の影響を受け利便性も向上しています。
【2025年公示地価】東京都区部 地価上昇率ランキング<商業地>
| 順位 | 区 | 所在「住居表示」 | 上昇率 |
| 1 | 渋谷 | 桜丘町15番6外「桜丘町14-6」 | 29.0% |
| 2 | 台東 | 浅草一丁目16番14外「浅草1-1-2」 | 27.6% |
| 3 | 台東 | 西浅草二丁目66番2「西浅草2-13-10」 | 25.2% |
| 4 | 台東 | 浅草二丁目24番6 「浅草2-14-13」 | 24.2% |
| 5 | 渋谷 | 渋谷二丁目6番9外「渋谷2-6-12」 | 24.1% |
まとめ
日本の国土面積は全地表面積のわずか0.24%しかなく、日本の国土の多くが山岳丘陵地帯で占められており、実際に住める居住地面積の割合は30%もありません。
特に駅に近いフラットな土地は希少性が高く、さらに駅周辺の商業地域は資産性と希少性が増していきます。その理由はズバリ「売りたい人よりも買いたい人の方が圧倒的に多い」からです。
そして駅周辺の土地はいわゆる稼ぐ力→収益力がとても高く、そこにさらに再開発が後押しし、一層地価が上がる構図となっています。
東京都では中心部では大きく地価が上昇しています。しかし全ての地価が上がる訳ではありません。駅から遠い土地、人口が減っていく土地、需要が低迷する土地などは当然の事ながら下がります。
2026年以降も日本の土地は正に「玉石混交」時代が続くと言えます。
執筆:野中 清志(のなか きよし)
住宅コンサルタント|株式会社オフィス野中 代表取締役
マンションデベロッパーでの実務経験を経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。 特定の企業に属さない第三者的な立場から、首都圏・関西をはじめ全国各地でマンション購入に関する講演・コンサルティングを行う。
居住用マンションから不動産投資(資産運用)向けセミナーまで、年間100本近い講演をこなす「マンション選びの第一人者」。膨大な供給データと開発現場への深い知見に基づいた、先見性の高い解説に定評がある。